人を見ない社会運動

最近、内閣支持率が67%、自民党の支持率が38%と言う報道がありました。しかし、物価や(国保や年金の掛け金を含めた)税金は上がる一方だし、社会保障の給付は削る削ると言われてて、教育や学術研究に対しても下げると言い出してる。その反面、海外には「援助」の美名で大金が出され続けてるし、円ドル相場や株価を上げ続ける為のお金は惜しげなく投入されてる。外交に関しても、何かやったかのように見えるけど、実は日本側が一方的に譲歩したり自分から自分の都合の悪い話を申し出ていたりして、しかも、その後日本がいい立場になったという話が、殆ど無い。

しかし、内閣支持率も与党支持率も、高止まりしてる。
確かに私は今の内閣も与党も全く評価してないのですが、その部分を完全に外すとしても、なんとも気持ちの悪い状況なんですね。
このあたりのことについて、少し考えてみます。

事実よりは、真っ赤なウソが流されてしまってる現代。

新聞やネットメディアの半分ちょっとくらいやテレビの多くは、今の政府がやってる事や、与党政治家のやってることに対して、表面的にしか書かなくて、しかも、遠回しかダイレクトにかはメディアによって違うとは言え、今の政府や与党がどれだけすばらしいかと言う事を報じたり、そこに対して文句を言う人々や与党が如何に滑稽かと言うイメージを作ると同時に、今の与党や政府に都合の悪い話や与党政治家の悪事のような話は、本当に当たり障りないようにしか報じず、人々の記憶に残らないようにしてる。
結果として、マスコミやネットメディアの多くから世の中を見てる人たちにとっては、今の政府や与党の「すばらしさ」「格好良さ」と、そこに反対する人たち・その為にひどい目に遭う人達は「みすぼらしい」「滑稽だ」「悪人」などと映ってしまう。そして、今の自分の暮らしが良くないのや将来に希望が全く見えないのは、自分一人の責任だと思ったり、下手をすると、野党の人達が全部悪いんだ。と、全く事実と違う認識を持ってしまってるのではないかと思うのです。

もう少しアプローチを変えてみましょう。
最近と言うかこの数年以上、韓国では日本が第二次世界大戦で行った従軍慰安婦の問題が、政治的な問題として非常に大きくなっています。その中で、従軍慰安婦の問題を世界中に知ってもらうんだ。として、金属製の慰安婦の像を、世界中の韓国人コミュニティを通じて置いていく。と言う事を、韓国政府(朴槿恵政権)もおおっぴらに入る形で、行っていました。
それに対して、元々慰安婦問題などなかったという立場の、日本の極右の人達が猛反発するだけではなく、日本の多くの人達が反発をしました。

慰安婦問題と領土問題を利用して、国民間の対立に火が付けられた

私は、慰安婦問題はきちんと検証して責任を取るべき人達が取ると同時に、慰安婦だった人たちに償うべきだと思いつつも、慰安婦像の動きも非常に危険だし独善的だと、批判してます。慰安婦像に代表される、この五六年の韓国の「竹島(独島)問題」「慰安婦問題」は、日本に於ける「拉致問題」「歴史教科書問題」と同じように、韓国国内の社会や政治が抱えてる深刻な問題から、韓国国民の眼をそらすために、政府と一部の運動がやってるに過ぎないと、私は見ていて思ってるのですね。それに対して、日本の左派運動の「主流」を自称する人達が、全く諌めず・逆に「日本人は反省しろ、韓国の運動は全く正しい」と言ってる訳で、こういう言説や認識を、今の日本の政権に対抗する立場の人達が取ってしまってるというのが、実は、内閣支持率の高止まりを招いてる大きな要因の一つなのではないか。と思うのです。

韓国の、今主流である慰安婦問題運動は、私の目から見たら、韓国人のナショナリズムや自民族優位主義(エスノセントリズムといいます)に訴えかけることによって、自分たちの社会的地位を盛り上げ続ける事が目的と化していて、「自分たち」以外の慰安婦であった当事者の人達の幸福とかは、全く置き去りにしてるように見えるんですよ。(詳しく知りたい方は、「アジア女性基金」と「挺対協」で検索をしてみて下さい)。日本の戦争責任を追究することだけに集中した余り、「日本と戦う自分たち」を盛り上げて社会的権威になる事が先に来ていて、それに対して、朴槿恵政権にせよ李明博政権にせよ、「日本と戦う自分たち」を演出する為に、暗黙の共同戦線を組んでしまっていた。
彼女らの運動は、非常に激しいものであるので、自分たちと意見が違う人達や自分たちを諌める人達は、激しい攻撃の対象になってきました。結局、異論や厳しいことを言う人達が、殆ど運動の中にいなくなってるのではないかと、私は見ています。

そういう中で、慰安婦像という問題が出てきた訳です。慰安婦像を、韓国国内でだけ作ってるのならば、問題はなかったと思います。しかし、彼女ら彼らは、海外の韓国系住民コミュニティを大きく巻き込んで、その土地土地に、慰安婦像を建ててしまったし、地元の議会にも、日本の戦争責任を追究する決議を出すように働きかけたりもした。現地の日本人とそこそこ上手くやっていた人達の考えや利害を押し切る形で、日本人は悪だ・責任を取れという話を、大々的に海外でやりだした。
ここでも、地域社会での和解ではなく、対立を産み出そうとしてる訳ですね。
こういう流れは、慰安婦問題の解決になるかと言えば、全くならないのです。実際、日本が今の政権になってから、慰安婦像や議会決議に対して、日本政府が直接圧力をかけたり、トンデモな中身の歴史書を配布しようとしたりしてしまってる。

(本当の意味での)普通の人たちを無視し見下す、日本の社会運動

 

日本政府が余りにダメだとか、日本政府の動きを後ろで支えてる右派の人達の歴史認識がダメすぎるという話は、置いておきます。
その上で、海外で慰安婦像が大量に置かれようとした時の韓国政府の動きや韓国の慰安婦運動の動きを見ていて、私は猛烈に憤慨したんですよね。この人達は、慰安婦問題の解決・慰安婦だった人達の救済ではなく、世界中のコミュニティで韓国人と日本人が対立することを願ってるんだな。と。余りに、政治利用が過ぎる。と。

私ですら、そう思うわけですから、日本の普通の人達(※ネットとかでわざわざ「自分は普通の人です」と書くような人は、除きます。)が、どう思うかと言えば、大半の人が確実に、「韓国うざい」「韓国と戦ってくれる、今の政権の外交は素晴らしい」となってしまうわけです。
日本の、左派側の運動は、この事を全く分かってないんですよね。あくまで、韓国の過激な慰安婦問題運動が正しくて、彼女ら彼らのやってることが全て正しく、日本側はそれを全て認めないといけない。と言う人達が、今社会で目立ってる左翼の人には、物凄く多い(これは、あとで書ける時に書きましょう)。

そして、それ自体が、日本の左翼とかだけではなく、日本で政府にひどい目に遭わされて困ってることを表明した人達や、政府の酷いことに抵抗し続ける人達への、軽蔑とか色眼鏡のようなものを、より強固なものにしちゃってるんですよね。

事実より、真っ赤なウソに喝采し、受け入れる多くの人々。

例えば、沖縄問題。これは、私が見ている状況だと、米軍の利益云々すらなくて、米軍にまつわる利権で儲けてきた人達の利益維持のために、日本の米軍政策で大きな損害を被る人達を無視する政策とか行政命令が作られて行ってて、沖縄の大半の人達からしたら、そんな利権での利益なんてないも同然だから、今の日本政府には、全県レベルで猛反発してる訳ですし、そこには、昔からの流れで、日本全体の左翼や左翼に近い人達が、加勢してる。
最近、東京MXTVでやっている「ニュース女子」と言う番組で、この反対派に対して「暴力的」「金を貰ってる」と言う、左翼運動の現状を少しでもしってる人がみれば、全く事実に反する・真っ赤なウソが、流されて、それには沖縄の人達や加勢してる人達が猛烈に抗議してるのですが、東京MXは居直り続けてる。
この番組のスポンサー自体が、経営者が今の政権を応援していて・日本会議なんかともつながりの深いDHCだったりするという問題があるんですが、それは置いておいて、東京MXがなんでこんなに頑ななのかと考えてみたんですが、結局は、「日本国民の大半はこのような番組を支持してる」と考えてるからじゃないかと思うのですよ。

日本の戦後と言うか、1980年代おわり位からの風潮として、「上の言うことに従うのは当然」「上の言う事でひどい目に遭うのを抗議したり抵抗したりするのはわがまま」というのが、あります。
そして、それの根拠の一つとしてあるのは、「抵抗する人達や抗議する人達は、上から目線で押し付けがましい」と言う事があるんですよね。これは、「リベラル」な人達だけしか見てない、左派の多くの人達には全く見えてない視線でもありますが、要は、「左翼は自分たちが正しいということを押し付けるだけで、真面目に自分たちと対話しないで、悪だ敵だと攻撃してくる」と言うイメージを、多分、実際に運動に触れたこともある人達の経験も含めて、多くの人が持ってしまってるんですよね。
その流れとして、慰安婦問題や沖縄問題が、乗っかってしまってるんですよ。

人々の心を見ないで正義と快楽に酔い痴れた、報酬。

要は、慰安婦問題で韓国側にばかり立ってるように見られてることが、実は巡り巡って、多くの人達から沖縄がスティグマ・負の烙印を圧されることに繋がっていて、その文脈として、「ニュース女子」に代表される、今の政府に都合のいい真っ赤なウソが、多くの人たちに信じ込まれてしまうという事態になってるんですよ。

どんなに正しいことを言っても、正しいことにだけのっとって動いていても、そことは外れる人達を軽蔑したり、ましてや悪だから罰を与えろと言い出したりし続けていれば、人々から信頼されなくなるし、敵として見られるようになる。(ここらへんには、漫画などの表現規制問題での左翼運動主流派の歴史的経緯も大きく関わってくるのですが、今回は省きます)。

このことに対して、左翼を自称する人達の多くが余りに鈍感すぎた。

鈍感であるだけではなく、押し付けがましいとか上から目線だとか、自分たちのことを見ていないという、至極まっとうな批判に対して、自己責任論まで持ち出して「論破」しようとする運動家が、つい最近まで多くいた上に、そういう人達に限って過剰に目立っていたわけですから、その人たちが支援してる慰安婦問題とか沖縄問題に対して、事実なんか見られる訳もなく、「ニュース女子」のように、あの人たちが如何に不正で犯罪までしてるか。と言う、真っ赤なウソに、ころりと騙されてる訳です。

こういう事が、貧困問題とか障害者大量殺傷事件とか、福祉問題や老人と若者の人口格差問題でも沢山出されてしまっていて、既に、人々は左派とか政権に抗う人たちがどれだけいいことをしていても全く見ようとしなくなり、今の政府のように言葉だけはいいんだけど、口先だけで、後で酷いことして知らんぷりするような、人として余りに酷いような人たちの方を、向いてしまう。

この状況が、2009年に民主党政権交代する前から日本を壊し続け(小泉政権の時にこういう詐欺的な人が沢山出てきたのも、ありますし)、民主党政権が日本を立て直そうとするのに対してマスコミが大きく批判したりなんかして潰れて、自民党に再び政権が戻る。と言う、2000年代の流れの全てで、あった訳です。

ここを、あらゆる立場の人達は乗り越えないとダメだと思うのです。
左翼運動や抗う人々は、自分たちの正当性を他人に押し付けるのをやめ、内輪の論理以外にも目を向けて考え直した上で説得をしていくようにし、そこに乗らない人達や批判する人達を、軽蔑したりそのことだけで社会悪であるかのように攻撃したりするのを、極力抑えていかないとダメだし、それ以外の人達は、今までの歴史を改めて見直した上で、もう少しドライに、自分たちが生きていくために、誰がいいことをしてきたのか・誰が悪いことをしてきたのかを自分自身で考えていき、今まで「上から目線」だった人たちに対してぶつけ、考えをお互いに高めていったり、色んな所で議論を起こしていかないといけないんじゃないかと思うんですよね。

日本に欠けているのは、そういう部分ですから。