衆院選だから、敢えて、不条理な表現規制と闘ってきた人たち・政治家たちのことを書いておく。

 選挙に関連して、今日はちょっと特別なことを書きます。
 ネットの中で比較的ホットな流れとして、「表現規制問題」と言うのがあります。これは、漫画などの表現に関する規制の動きを推進したい人達と止めたい人たちが、ネットの中だけではなく、ネットの外でも闘い続けてるという話です。私の記憶に全面的に頼った話になるので、不正確なところや曖昧な表現が出てくるかも知れませんが、ご指摘はコメント欄かツイッターにてお願いします。(メールで送られても無視するか文章を公開します)

1980年代に話は遡る。

 事の発端は、1980年代の半ばだったと思います。当時は、漫画週刊誌に、主に男性向けの性的なものが大きく持ち込まれた時期で、この頃から、一部では「性暴力表現を許すな」「男性至上主義だ」と言う指摘があったのですが、大きくはなかった。それが変わったのは、1989年の連続幼女誘拐殺人事件でした。この時、犯人(死刑執行された)は、単なるコレクターでなんでもビデオやなんやで収集していた上に、所謂「ロリコン」ではなく、無抵抗の誰かを殺したかっただけだというのが後から判明したのですが、当時は、「ロリコン」で「オタク」だと、それこそ捏造までして報道された訳です。
 当時は、いわゆる「オタク」でも、男性のオタクに対する差別を超えてヘイトスピーチと言って差し支えない嫌悪表現が、テレビでも新聞や週刊誌でも、毎日当たり前のように流れていた時代ですから、この事件は「オタクの犯罪」とされ、「犯罪者予備軍のオタクを社会から排除しろ」という声すら、当たり前にマスコミで流されていた。
 それに勢いを得たのか、「純潔主義」を要求する、右派系のカルト宗教…念法眞教統一教会など…が、「わいせつコミックを全面規制しろ」とデモをしたり署名を集めたりし始めます。こういう流れに呼応するように、日本でフェミニズム運動を展開する人達が、「ポルノコミック排除」を言い出し、行政に働きかけるようになります。
 こういった、左右両方からの動きに、警察が乗っかる形で、男性向けの性的な表現を行ってる漫画家や出版社・それを販売していた関係者を、何人も逮捕して言ったわけです。確か、1991年。

 このことで、世の中が一気に萎縮しました。
 あらゆる漫画雑誌や表現媒体から、男性向けの(女性を性的に表現した)性表現が、一気に消えました。エロを売りにした漫画雑誌が、性表現と言えば申し訳程度の裸と性交だけという、今では想像のつかない状態に、数年間追い込まれたし、コミックマーケットでも、非常に厳しい検閲を行い、警察の介入を防ごうとしていた。
 当時、この事を強く憂慮する人達が、少なからずいて、その人達は「マンガ防衛同盟」と言うのを、西形きみかず氏主宰で作ったわけです。これは、比較的左翼の方から出てきた流れではあったのですが、「男性オタク差別」が強い社会状況だったのと、左派運動の一部にいるフェミニストたちが「ポルノコミックをなくせ」と主張して、色々無茶苦茶な話を正当化していたので、そのような左翼運動と、まず戦わされる状況だったと、記憶しています。

児童ポルノ・買春禁止法」を巡る攻防戦。

 この流れが一段落した時に、今度は、フェミニズム運動と警察が主導する形で「児童ポルノ問題」が持ち上がりました。児童の裸はポルノだ・青少年に性的な権利を認めるよりも、彼らを「まもる」為に、権利を奪い・彼らを性的に思う人達を犯罪者にせよ。そして、それを絵などの創作物であっても創作する人達やそれを好む人達は、すべて犯罪者だ。
 そういう流れで、1990年代の後半に、国際会議の場で事実に反する「日本は世界最大の児童ポルノ発信国」などの嘘を並べて国際世論を煽り・それを「外圧」にして文句を言わせないようにして、非常に厳しい法律を作らせようとした。
 当時、私は中途半端にしか関わってなかったので不正確な部分が出ることを予め書いておきますが、「マンガ防衛同盟」に参加した人達の中で、西形氏のやり方以外で色々と動きが出て、山本夜羽音氏たちが、国際会議での情報発信や、政治家への働きかけを始めた訳ですよ。
 その働きかけの中で、(いま立憲民主党代表である)枝野幸男氏や、(社会党副党首の)福島みずほ氏や(世田谷区長の)保坂展人氏が、これをきちんと受けとめ、周りの政治家たちを説得していったし、その流れの中で、共産党も、「流石にフィクションまで児童ポルノ扱いすべきではないだろう」と、合意をしていった訳です。
 そういう非常に粘り強い抵抗の中で、フェミニズム運動や宗教右翼からの誹謗中傷が沢山されるのにも絶えて、1999年に制定された児童ポルノ・買春禁止法から、フィクションや絵などが処罰対象にされなくなったし、その後、保守やフェミニズム運動側がそれらも入れろと激しく圧力をかける中でも、枝野・福島・保坂氏と彼らに説得された政治家たちによって、それをはねのけ続けてる訳です。

青少年健全育成条例の改悪と、それに対して立ち上がった沢山の人達。

 その頃、フェミニズム運動や警察は、別の方向から切り崩しを図っていました。各都道府県の青少年健全育成条例を、非常に厳しくし・検閲を全面的に行い、性的な表現(彼女ら彼らは、男性向けの性表現を考えていた)を社会から排除していこう・青少年の性的な行動や気持ちを、犯罪にしていこう。とした。
 これは残念ながら、彼らの思惑通りに進んでしまいました。反表現規制側の動きが、人手不足のために国会や国の法律に集中せざるを得なかったからだと、私はまとめることができます。
 そうこうしているなかで、2009年に、出版社が多くあり・出版取次も多くあって影響力が高い・ここでダメだと言われたら全国で売れなくなってしまう事になる東京都で、青少年健全育成条例を非常に厳しくし、検閲を拡大しようという動きが出ました。
 この時、今まで議員に働きかけていく事で法律の改悪を止めてきた人達が議員たちに働きかけると同時に、それでは不十分だと考えた人達が、議員や議会に仕事の邪魔にならないように声を届けよう。と当時日本で流行り始めていたツイッターなどを通じて呼びかけました。
 議会が始まってからの呼びかけで急だったものの、この条例案の議決までに三百通以上の請願書が、それもテンプレなどない状態で書かれた請願書が、東京都議会に届けられました。
 その事もあって、民主党がざっくり割れて、改悪に反対する議員が続出し、改悪案は一旦否決されました。

 そして、次の議会が始まるまでの間、警察に非常に近いPTAや宗教団体・フェミニズム団体の運動家たちが、反対した政治家たちに対し「エロ議員」などの、非常に醜い誹謗中傷をばらまき続けたのもあって、次の議会で、又出てきた改悪案に対し、民主党の態度が割れ・最終的に都議会民主党執行部に一任することになり、賛成を強制することになってしまいました。この時健全育成条例の改悪を民主党が賛成するように影響力を行使したと言われてるのは、今は希望の党に行って幹部になってる松原仁や、引退した小宮山洋子と言われています。

まだまだ、闘いは続き、そして心ある政治家たちが闘い続けてる。

 そのような流れがあり、その後、東京都が小池百合子を知事にした辺りから、急激に、女性向けの性表現・特にBLを厳しく検閲するようになりました。それまでに、男性向けの性表現が物凄く規制され・住み分けもほぼ終わってしまったがために、女性向けの性表現が標的にされるようになったのです。
 更に、家庭教育基本法の制定や青少年健全育成法を名前を変えた形で制定しようという動きが、主に保守や右派・自民党や維新の党…多分、希望の党もこの動きに乗るでしょう…から出てきていて、選挙が終わった後に、確実に動きが出てくるでしょうし、児童ポルノ・買春禁止法の改悪・絵やフィクションを児童ポルノとして規制しようという動きも、まいどながら復活して来るでしょう。

 その時、止める立場の人達が、少しでも多くないと、どんどんなし崩しに検閲が広がり・家庭生活への国などの介入も増え、ただでも貧しくなって、しかも窮屈すぎて生きづらい世の中が、もっと生きづらくなってしまう。
 この事を、選挙に投票する先を誰にするか決めてない人や、「保守政党」に投票しようかと思ってる人達は考えてほしいなと思うのです。

 所謂「オタク」の中では、立憲民主党社民党共産党と言った「左翼政党」が表現規制を推進してきて、自民党や維新の党がそれを止めてきた。と言う真っ赤な嘘が常識のようにされてることがあるんですよね。それは、自民党の言論戦略によるものなんですが、実際のところ、真逆です。

 立憲民主党社民党共産党の人達は「表現の自由」「言論の自由」をこの十数年間真剣に考え、闘ってきました。それこそ、「仲間」からの誹謗中傷や嫌がらせにすら耐えて。
 この人達を、優先的に当選させる・動ける人が選挙の手伝いをして、つながるように出来る、そういう状況を前に進めて欲しいと、私は思っています。

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