中国の検閲を理想という、角川グループ社長の「海賊版排除の為にネットを検閲しろ」発言から見る、この国のエリートの崩壊ぶり。

 台風がすごいことになってますね。今も外は風がすごくて、下手に外に出られない感じになってます。みなさんも、お気をつけて。

角川グループ社長の「OP53Bを徹底せよ」発言の波紋。

※2018/09/05昼 おことわり:この文は、角川CTOの川上氏の経歴を、iモードについての部分でドワンゴ取締役の夏野剛氏の経歴とごっちゃにして書いてしまった物です。お詫びして訂正…しようと思いましたが、iモード云々の部分を削るとぐちゃぐちゃになりそうなので、申し訳ございませんが注釈を付けて・訂正線を引いた上でそのまま置いておきます。本当に申し訳ございません。

 さて、この二週間ほどで、世の中いろいろありました。角川の代表取締役ニコニコ動画を運営しているドワンゴの社長でもある川上量生氏が、「海賊版サイトを撲滅するために、日本のネットユーザがプロバイダの外にあるDNS(ネットのアドレス帳検索サーバー)に繋げないようにしろ」などと、政府の会議で発言し、監督官庁総務省のお役人が「流石にそれはダメではないか」と抵抗した事が、話題になってました。
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 川上氏は、前から「中国の厳しい検閲こそが、ネットのあるべき姿だ」などと著書で書いてたようで、彼からするとネットで国民なりユーザなりが自由に情報に不アクセスして自由に使ってたら、色んな「利益」を失うから、中国のようにどんどんしめつけて、自分達の「おすすめの」情報以外は得られないようにしないといけない。と言う考えのようなんですよね。
 川上氏ご自身が、今となっては日本のケータイネット技術を大きく遅らせた、NTTドコモの「iモード」で著作権管理をガチガチにやって、音楽や動画を自分でケータイに入れることすらままならない機械を押し付け・ネットワークを閉じたものにして、ユーザにものすごい不便を強いる中でぼったくり商売をまかり通らせて、ボロ儲けする。と言う商売のやり方を組み立てた張本人な訳ですよ。(注:iモードをやったのは夏野剛氏です。お詫びします。)
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 彼からすれば、日本のネットユーザは「養分」であって、徹底的に締め付けやれることも制限した上で、そこでコンテンツ会社などが法外に高いお値段で質の悪いものを押し売り同然に売りつけられるシステムを作った成功経験が忘れられないのでしょう。
 しかし、そのようなビジネスモデルが、ケータイに限らずテレビのB-CASカードや携帯音楽プレイヤーのガチガチ過ぎる著作権保護、CCCDなどの悪名高い物がはびこる形で蔓延してた00年代によって、人々がテレビからも音楽自体からも離れて、このビジネスモデルを取った業界が、軒並み落ちぶれちゃってるわけですよ。CCCDが出る前後くらいまでは、CDにせよ「AKB商法」みたいにしなくても100万枚超えるのが当たり前に出てたし、テレビだって物凄い社会的な影響力があった。
 それを支えてたのは、実は、「お手軽コピー」でもあったんですよね。簡単に(パソコンなども使って)複製し、「これいいよ」って友達に流すことで、「いいから買おうか」「いいから見ようか」「同じ製作者の他の音楽や番組を買ったり借りたりしてみよう」。こういう感じで、どんどんと人の輪を通じて「良さ」が広がり、それがコンテンツを作る側のお金儲けの基になってた。
 そこの部分を根絶やしにすれば、もっと儲けることができる。ってやったのが、00年代の音楽業界やテレビ業界と、NTTドコモに代表されるケータイ三社だったんですよね。焼畑農業を繰り返した挙げ句に、儲ける源すら焼き払ってしまった。
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非常に狭い範囲の競争で勝った「エリート」の傲慢が、戦後日本を壊し続けてる。

 川上氏の今回の発言は、彼の「イデオロギー」・思想なんでしょう。しかしそれは、この国を壊した、非常に幼稚で短絡的な事そのもので、なんでそんな事が理系文系問わず、この国の偉い人達の多くにはびこってるのか。と言う事を考えると、要は、この国の「エリート」のありようというものが非常にいびつで、表面的な知識の量と短い時間に与えられた問題をこなす能力ばかりが訓練されて、そこで「勝ち残った」人たちが東大に行ったり、霞が関の省庁や大企業の幹部職員として採用されたりする。と言うシステム自体の歪さでもあるんじゃないかと思う訳ですよ。
 幅広すぎる教養や自分の身の回りと全く違うところもきちんと見て考える広い視野。というものが、彼らからはすっぽり抜け落ちてて、その上で、非常に狭い範囲の「競争」で自分が勝ったんだから、勝てなかった人間や競争に参加しなかった人間は「格下」なんだ。自分達は「格下」の人達をとことん支配して構わないし、その為には時の権力と密接に結びついて彼らを動かしていく「権利」を持ってる。
 そんな感じの、非常に歪んだものが、この国では最低でも昭和のバブルが弾けてオウム事件なんかがあって混乱し始めた95年前後から、この国のエリート層に汎くはびこってるのではないか。と思うんですよ。

教養のないエリートのわがままを乗り越えるには、私達がきちんと流れを作って行くしかない。

 彼らからすれば、「教養」や「ひろく物を見て自分の力で考えて悩むこと」は、「余計なこと」「お遊び」でしかないんですよ。その事が、原発事故のことや放射能汚染の被害・いろいろな薬害や公害で、被害者の人達が被害を訴えたりしたのを「嘘つき」「放射脳」などとバカにし、真面目に物事を考えないで「日本の中でしか通用してない”常識”」から外れた考えやその”常識”がもたらす問題や過ちを指摘する人達に対して「嘘つき」「頭がおかしい人」と貶して排除してなにかいいことをやったつもりになれるような、非常にあさはか極まりない「エリート」が、分野を問わずにのさばる事に繋がってると思うんです。
 そのようなあさはか極まりない人達の中には、「愚かな大半の人達を、自分達が啓蒙して導かないといけない」と思う人も多くて、それが、例えば今回の川上量生氏の「中国が理想のネット」思想に基づいた「海賊版撲滅」と言う物言いに繋がってるのではないか。
 そういう事で、多くのことが廻らなくなり、苦しんでしまうのは、私達「エリートになれなかった人々」で、その人達が新しい流れを、一つではなく沢山作って、その事で社会の方向を決めていくようにしていく必要があると思うんですよ。
 エリートも大事かも知れないけど、エリートの外側にいる人達がきちんと世の中に関わって、世の中の動きを決めていかないと、この社会はどんどんとやせ衰えてしまう一方ではないかと、思うのです。