敗戦記念日の「ノモンハン事件」番組から、この国の無責任体質が続いてる事に改めて向き合ってみる。

 今年も、終戦記念日と言われてる敗戦記念日が過ぎていきました。今年のNHKは、ノモンハン事件での関東軍日本陸軍の無責任さをNHKスペシャルで取り上げましたが、これは、改めてドン引きするしかなかった訳ですよ。辻政信という関東軍(当時日本が植民地にしていた満州国を支配していた軍)の参謀が、無理過ぎる作戦を立てて、それを色々強いことを言ったり人脈に訴えたりしてゴリ押しし、そんな事言ってもソ連軍がノモンハンに戦車や大砲を運んでるのを見たから無理だ。とソ連に駐在してた武官の人が訴えたりしてもそれを無視するどころか辻参謀が武官を脅して黙らせようとしたりして、結局国境を超えて日本が爆撃したり、兵隊に国境を超えさせたことでソ連と全面的に衝突し、数カ月間戦った末に、日本側が悲惨な形で惨敗した訳ですよ。
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辻政信と言う、非常に邪悪な参謀は、一人だけではなかった。

 で、そのデタラメな作戦を辻参謀やその周囲の関東軍の偉い人たちが取ったか。と言えば、一時期左遷された程度で誰も取らないでいたわけですよ。その反面、戦場の現場で兵隊がバタバタソ連の猛攻に倒されたり餓死寸前になったのを見かねて撤退を決めた指揮官や捕虜になった航空戦隊長なんかが、責任を取れと迫られ、拳銃で自決させられて行った訳です。
 この体質と言うか伝統というのは、結局、太平洋戦争・大東亜戦争に日本が負けるまでずーっと続いてて、去年のNHKでやったインパール作戦にしてもむちゃくちゃな作戦を立てた人達は誰一人責任を取らずに戦後を迎えて、多くの戦場で犬死にと言っていいかどうかすらわからないほどムダでしかもデタラメな死に方・殺され方をした兵隊や民間人が、日本では相次いでた訳です。インパール作戦ガダルカナルニューギニア戦線などでは、無理な作戦を立てられて、それに従うしかなかった兵隊たちが、万の単位で餓死していきました。マラリアなどで病死する兵隊も沢山いた。そんな戦場が非常に多かった。そして、日本軍に関しては、戦場で敵兵や飛行機・戦車などに撃たれて死んでいった兵隊よりも、餓死させられた兵隊のほうが圧倒的に多かったし、戦争末期には、沖縄のように民間人を米軍に引き渡さずに手榴弾で自爆を強要したケースも沢山あったし、最終的に敗戦を受け入れるに至った過程では、沢山の民間人を関東軍将官たちや満鉄などの幹部たちが見捨てて、自分達と家族だけ先に日本に戻り、その直後にソ連軍が侵攻して捕虜にされたりレイプされたりしたことも、珍しくなかった訳ですよ。
半藤 一利さん|証言|NHK 戦争証言アーカイブス 戦後日本のあゆみ

 そしてその後将官や参謀などが責任をきちんと取ったかと言えば、米軍の追及を逃れるために戸籍を消したり変装したりして逃げ延び・占領軍が日本を出てから出てきた人も多かったし、戦時中やその前、軍だけでなくお役所なんかも何を決めて何をやってたのか、わからなくするために、8月14日からの一週間ほどで書類を焼き捨てたりまでしてた訳です。誰がどのように言ってどういう風に決めたか。ということは、徹底的に消されていってしまった。
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 辻政信参謀は、結局、こういうことに助けられて、戦後占領軍の目を逃れて逃げ続け、占領軍が去った後、表に現れて手記を発表し、それを何故か当時の人達がもてはやし、彼は結局、国会議員にまでなってしまった訳です。最後は、ビルマ国境あたりで行方不明となったとは言え、本来、畳の上で死なせてはならないような真似をやらかしまくった人が、畳の上で死んでしまったような物です。
辻政信の戦後の潜行と作家・政治家としての活躍
gendai.ismedia.jp

今も、多くの辻政信が日本の社会や政治にのさばってる。

 これは、戦争のときだからそうなってしまっただけだったのでしょうか?実際には、そんなことはない訳ですよ。
 00年代、多くの自治体・特に政令指定都市で、「改革派首長」が誕生しました。聖域なき構造改革と自己責任をテレビなどで訴え、それをテレビが非常にもてはやし、その力を借りるようにして市長や知事になり、自分の思い込みに沿った・多くのことで現実とかけ離れた政策を、やっていった訳です。議会が逆らえばマスコミをうまく操って喧嘩をやり、その政策で不都合を押し付けられたり苦しめられてる人達が文句を言えば、その人達をあざ笑うかのようにして、マスコミをうまく操ってその人達を徹底的に悪者扱いして叩かせたりまでした。
 そして、その事で財政がおかしくなったり、自治体の中の社会が荒れ果てたり苦しむ人が沢山出たりしても、一切責任を取らない。最後に大きな問題を起こしても、自分が辞めるだけで責任を取ったことにし、マスコミもマスコミで、どんだけ酷い・デタラメな真似をその首長がしたのか、全く検証すらしないから、その人が例えば、国会議員やコメンテイターとして出てきてしまうことすら珍しくない。
 横浜市長だった中田宏や、大阪市長大阪府知事を歴任した橋下徹なんかが、代表的ですが、今でも、千葉市長の熊谷俊人なんかも、そういう気配が物凄くする訳ですが。

 そしてなにより、日本のトップ・総理大臣が、そんな事ばっかりな訳ですよ。色んな政策をこの六年間で安倍総理は持ち出してきましたが、その多くが大失敗してるか、日々暮らしてる大多数の普通の人達をひどく苦しめたりする結果を招いてる訳です。その事をマスコミが真面目に報じないから、責任問題が曖昧になってるし、今までの六年ほどの日本の有り様に、うっすら不満やおかしさを感じても、それをなかなか形に出来てない。
 安倍総理は、かなり早い段階から、マスコミの幹部と食事をしたりしてマスコミを取り込もうとすると同時に、自分に批判的な話や報道をする人たちに対しては、マスコミ各社の幹部を呼びつけ・怒鳴りつけるなどして脅し、そのような人達を表に出させないように仕向けていってるわけですよ。
 森友・加計の問題なんてのは、その延長線上の話で、自分の思い込みと自分のワガママかつ勝手な「善意」の押しつけと、自分の身の回りにだけ税金をつぎ込み、えこひいきし、その外側で苦しんでて本当に税金が必要な人達や、将来の教育・科学技術や社会科学の粘り強さを育てると言う部分は、ムダとして切り捨てるのは、彼らの無責任さや自分勝手さと言う部分で、非常に繋がってる。
 ネットの世論やマスコミの論調なんかに多く見られてますけど、「議論してて決められない政治よりも、即断で一気に決めてしまう安倍さんが素晴らしい」「議論を重視してる野党はダメだ」って声が、相変わらず強いんですよね。でも、それは、辻政信的な無責任で冷酷な人達がのさばりやすい風土そのものだし、それを、戦後73年間、この国は維持するどころかかえってひどくしてるように思えてならない訳です。

「良心を持たない人達」が仕切ってる、この日本のありようが続いてる。

 パーソナリティ障害と言う精神疾患のようなものがあります。
 その中には、反社会性パーソナリティ障害というものがあって、その一部がサイコパスとも呼ばれてますが、こんな特徴がある訳ですよ。

良心をもたない人たち
一、社会的規範に順応できない
二、人をだます、操作する
三、衝動的である、計画性がない
四、カッとしやすい、攻撃的である
五、自分や他人の身の安全をまったく考えない
六、一貫した無責任さ
七、ほかの人を傷つけたり虐待したり、ものを盗んだりしたあとで、良心の呵責を感じない
精神医学の専門家の多くは、良心がほとんど、ないしまったくない状態を、「反社会性人格障害」と呼んでいる。
この良心欠如の状態には、べつの名称もある。「社会病質」、ないしはもっと一般的な 「精神病質」。
アメリカ精神医学会発行の『精神疾患の分類と診断の手引』第四版によると、「反社会性人格障害」の臨床診断では、七つの特徴のうち、少なくとも三つをみたすことが条件とされている
http://www.soshisha.com/book_read/htm/1472.html

 この特徴自体は、アメリカの一世代旧い精神障害の判断基準(DSM-4)によるもので、もう少し特徴がアップデートされてるとは思いますが、日本で褒め称えられる人たちや、偉くなる人たちに、極端にそういう人達が多いように思うのです。

 この手の人たちは、良心がないか非常にいびつであると同時に、人から魅力的に見られやすく、しかも、その本質が酷い邪悪だと見抜く人たちを孤立させるのが非常に上手い。そして、そのような人達が社会の上の方に非常に偏っているのだと言うことは、例えば総理や総理を操ってると言われてる今井尚哉秘書官のように不都合な事実をマスコミに報じさせないように脅したり、色んな所がカネを出してマスコミを黙らせたり、暴力団となぁなぁになって、自分に都合の悪い人達を、社会的にも物理的にも抹殺することに全く怖れをもたない事も抱えてる訳です。
 そして、そのような人たちは、自分達の欲望・自分が何もかもを独占して、人の生き死にまで自分が支配できるようにするために、人並み外れた努力を払ったりもする。
 私達は、良心の支えで社会を廻したり社会に助けられたりしてきてる訳ですが、その上の方に、良心にかけた人達が沢山いてそれが社会を支配しようとしてるというのですから、どんどんと社会の崩壊に拍車がかからなくなって行く訳ですよ。努力したそばから、上の方の良心のない人達がそれを逆手に取って、自分達の都合のいいように物事をゴリ押ししていきますからね。

日本の危機とは、良心のない人達が社会を仕切ってる悲劇そのものだと思う。

 今、日本が抱えてる「危機」と言うのは、末端で真面目に生きてたり、色んな理由で喰うや喰わずの思いをしてその日ぐらししてる人達・色んな理由で苦しみを押し付けられてる人達の真正面の「危機」と同時に、その人達が、「良心のない人達」の身勝手な利益や身勝手な善意によって、より苦しめられ続けてる。と言うことにあるように私は思うのです。
 あらゆる善意や節度が、「良心のない人達」の利益と自己満足のためにだけ働かされて、その外側にいる99.9%の人達を苦しめ・殺しすらすることにすりかられてしまってる。
 私達は、そのような「良心のない人達」をなかなか意識できない。彼らは、社会の表側に対しては非常に魅力的に自分達を演出し、批判を許さないように言葉たくみに振る舞ってますから。
 そうであるから、私達が彼らに苦しめられ続けてるとしても、本当に身近にそういう人がいて振り回されたり苦しめられたりする経験でもない限り、殆ど気が付かないで、自分達の努力不足が原因なんだ。と、勘違いしてしまう。
 そういうひどくいびつで、サイコパスがのさばりやすい社会に私達は生きてるし、私達がそういう社会を作ってしまってる。
 そこをどうにかして乗り越えて、「良心のない人達」に、きちんとその責任と報いを取らせる社会へと変えないと、「ノモンハン事件の悲劇」は、そう遠くない内に沢山起こってしまうと私は思うのです。